「人生100年時代」を迎え、定年後の暮らしをより豊かで安心なものにしたいと考えられている方も多いのではないでしょうか。
その選択肢として注目されるのが、高齢期の暮らしに配慮された「シニア向けマンション」です。
しかし、一口にシニア向けマンションといっても、資産として購入する「分譲マンション」から、身軽に入居できる「賃貸住宅」まで、その種類は様々です。
この記事では、シニア向けマンションの全体像から、賃貸と分譲それぞれの特徴、サービス内容、費用、そして後悔しないための選び方のポイントまで、網羅的に解説します。
そもそもシニア向けマンション(高齢者向け住宅)とは?
実は「シニア向けマンション」や「高齢者向け住宅」に法的に明確な定義はありません。
一般的には、高齢者が安全かつ快適に生活できるよう、バリアフリー設計が施され、様々な生活支援サービスが提供される住まいの総称として使われています。
これらの住宅は、契約形態によって大きく二つに大別されます。一つは、住戸の所有権を購入する「所有権方式」のシニア向け分譲マンションです。
もう一つは、毎月家賃を支払って住む「賃貸借方式」で、代表的なものに「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」や「シニア向け賃貸住宅」があります。
どのタイプを選ぶかによって、初期費用や暮らしの自由度、将来の資産計画が大きく変わってきます。
【種類別】シニア向けマンションを徹底比較!あなたに合うのは?
シニア向け住宅の選択は、将来のライフプランを大きく左右する重要な決断です。ここでは、契約形態が異なる「分譲」と「賃貸」の代表的な住宅について、それぞれの特徴、メリット・デメリットを深掘りします。
ご自身の価値観や経済状況、そして将来の健康状態を想像しながら、どちらがよりフィットするのかを考えてみましょう。
1.資産形成と自由な暮らしを両立「シニア向け分譲マンション」(所有権方式)
シニア向け分譲マンションは、主に自立してアクティブな生活を送る高齢者を対象とした、住戸の所有権を購入するタイプの住まいです。
法律上は一般の分譲マンションと同様の扱いであり、購入後は自身の資産となるため、将来的に売却したり、子どもに相続させたり、あるいは自分の好みに合わせてリフォームしたりすることが自由にできます。
一般的には、豪華な共用施設やホテルライクなサービスが魅力で、質の高いセカンドライフを求める層に人気です。
【メリット】
最大の魅力は、不動産という資産を所有できる点です。これにより、将来的な売却や相続が可能なだけでなく、自身のライフスタイルに合わせて自由にリフォームすることもできます。
また、レストランや温泉大浴場、フィットネスジムといった充実した共用施設や、コンシェルジュによるきめ細やかなサービスは、豊かで快適な暮らしを演出します。
【デメリット】
一方で、購入費用が数千万から数億円と高額になりがちです。また、物件数がまだ少なく、特に地方では選択肢が限られる可能性があります。
資産になる反面、需要が限定的なため、希望の価格やタイミングで売却できない可能性も考慮する必要があります。
介護サービスは標準装備ではないため、介護が必要になった際は外部の在宅介護サービス事業者と別途契約するのが一般的です。
また、シニア向け分譲マンションでは入居者の年齢に下限(例:50歳以上、60歳以上など)が設けられており、この年齢制限は管理規約で定められているケースが一般的です。
そのため、将来相続人となる子どもが若い場合には、相続後にそのまま住むことができず、また賃貸として貸し出すことも制限される場合があります。
このような規約によって、せっかくのマンションがいざという時に「負動産化」してしまうリスクも考慮しておく必要があります。
2.安心と柔軟性を兼ね備えた「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」(賃貸借方式)
サービス付き高齢者向け住宅(通称:サ高住)は、「高齢者住まい法」に基づき、都道府県への登録が義務付けられたバリアフリー構造の賃貸住宅です。
この制度の根幹をなすのが、専門スタッフによる「安否確認」と「生活相談」サービスの提供が必須とされている点です。
これにより、一人暮らしの不安を解消し、日々の困りごとを気軽に相談できる安心の環境が保証されています。
【メリット】
賃貸借契約のため、分譲マンションに比べて初期費用を抑えられる点が最大のメリットです。
一般的に敷金として家賃の数ヶ月分を支払うだけで入居でき、ライフステージの変化や心身の状態に合わせて、より適切な住まいへ柔軟に住み替えることが可能です。
法律で定められたサービスがあるため、一定の安心感が得られます。
【デメリット】
提供されるサービスは「安否確認」と「生活相談」が基本であり、食事の提供や家事支援、介護サービスなどはオプション契約となることがほとんどです。
そのため、将来的に手厚い介護が必要になった場合、月々の費用が想定以上にかさむ可能性があります。
また、施設によってサービスの質やスタッフの体制に差があるため、見極めが重要です。
3.気軽な住み替えと自分らしい暮らし「シニア向け賃貸住宅」(賃貸借方式)
サ高住以外にも、民間企業やUR都市機構などが提供する「シニア向け賃貸住宅」があります。
これらは法的な定義はありませんが、高齢者の入居を歓迎し、高齢者に配慮された室内設計や見守りサービスなどを備えた一般の賃貸住宅です。
年齢を理由に賃貸入居を断られるケースが少なくない中で、高齢者の重要な受け皿となっています。
【メリット】
最大のメリットは、サ高住以上に初期費用を抑えやすい点です。敷金のみで入居できる物件も多く、気軽に住み替えを検討できます。
門限などもなく、自宅と変わらない自由な生活スタイルを維持しながら、緊急通報システムなどの安心を得られるのが魅力です。プライバシーを重視し、自分らしい暮らしを続けたい方に適しています。
【デメリット】
物件が都市部やその近郊に集中している傾向があり、地方では探しにくい場合があります。
また、サ高住と違ってサービスの提供が義務付けられていないため、安否確認や生活相談といったサポート内容は物件によって様々です。
食堂がない物件がほとんどで、食事は基本的に自炊となります。
シニア向け賃貸住宅については、以下の記事でも解説しています。
シニア向け(高齢者向け)賃貸とは?知っておきたい特徴や入居者の属性まとめ
【タイプ別】シニア向け住宅の費用感を比較
シニア向け住宅への入居には、まとまった初期費用と継続的な月額費用が必要です。
ここではシニア向けマンションにおいて、「分譲」と「賃貸」それぞれの費用感を見ていきましょう。
シニア向け分譲マンションの費用
分譲マンションの場合、初期費用として物件の購入代金がかかります。価格は立地や広さによって大きく変動しますが、都内であれば数千万円から数億円が相場となるでしょう。
購入後も、管理費や修繕積立金、固定資産税などに加えて、サービス費などのランニングコストで毎月10万円から30万円程度が発生します。
これに加え、レストランでの食事代や個別の生活支援サービス費などが別途かかる場合もあります。
サービス付き高齢者向け住宅(賃貸)の費用
一方、サ高住などの賃貸住宅では、初期費用は一般的な賃貸契約と同様の敷金(家賃の2~5か月分程度)が基本です。
物件によっては礼金や敷金が不要な場合もあります。
月々の費用は、家賃、共益費、基本サービス費(安否確認・生活相談)などを合わせて、都内では15万円から25万円程度が相場となります。
ここに食費や水道光熱費、介護サービスを利用する場合はその自己負担分が加わります。
シニア向け賃貸マンション(賃貸)の費用
費用の一例として、リコーリースのシニア向け賃貸住宅「アンジュプレイス」はワンルームや1LDKの25㎡~40㎡のマンションが中心で、家賃はおおよそ10万円~20万円程度となっています。
入居時の敷金は不要(退去時請求)で、礼金は1ヶ月分となっているため、初期費用は他の選択肢と比べると抑えることが可能となっています。
シニア向け賃貸とサ高住等との費用感についてはこちらの記事でも解説しています。
シニア向け賃貸の費用相場は?サ高住・老人ホームの費用感と徹底比較
安全・安心な暮らしのために見るべき防犯・安全性
高齢になると、自身や住まいの安全を守る意識がより重要になります。これは分譲・賃貸を問わず共通のチェックポイントです。
建物のセキュリティ設備
まず確認すべきは、マンション全体のセキュリティレベルです。部外者の侵入を防ぐオートロックはもちろんのこと、エントランスや駐車場、エレベーターなどに防犯カメラが設置されているかは必須のチェックポイントです。
また、管理人や警備員が24時間常駐している体制であれば、心理的な安心感が大きく高まります。
住戸の防犯対策と緊急時対応
共用部だけでなく、個々の住戸の防犯性も重要です。ピッキングに強いディンプルキーや二重ロックの玄関ドアなどが採用されているかを確認しましょう。
さらに、シニア向け住宅ならではの重要な設備が、緊急通報システムです。
居室内やトイレ、浴室などに設置されたボタンを押すだけでスタッフが駆けつけてくれるサービスは、万が一の体調急変時に命を守る防波堤となります。
【子記事案内】
安全な住まい選びのための具体的なチェックポイントはこちらで詳しく解説しています。
シニアの住まいの防犯対策|マンション・住宅でチェックすべき防犯性5つのポイント
後悔しない!シニア向けマンションの選び方【5つのステップ】
高額な買い物、あるいは生活の基盤となるシニア向け住宅選びで失敗しないためには、いくつかの重要なポイントがあります。
以下の5つの視点から、ご自身に最適な住まいをじっくりと検討してみてください。
1. 身体状況とライフプランを明確にする
まず最も大切なのは、現在の健康状態だけでなく、将来の心身の変化も見据えて住まいを考えることです。
アクティブな生活を楽しみたいのか、将来の介護への備えを重視するのか。ご自身が住まいに求めるものを具体的に洗い出すことが、ミスマッチを防ぐ第一歩です。
2. 資産性と柔軟性から資金計画を立てる
住まいを資産として所有したいか、それとも初期費用を抑えて柔軟に住み替えたいかによって、選択肢は分譲か賃貸かに分かれます。
年金収入や貯蓄を基に、将来の医療費や介護費の増加も考慮に入れ、無理のない長期的な資金計画を立てましょう。
3. 立地と周辺環境を吟味する
日々の暮らしの利便性を左右する立地の確認は欠かせません。信頼できる医療機関へのアクセス、スーパーや商店街までの距離、公共交通機関の利便性などをチェックしましょう。
また、子どもや友人が訪ねやすい場所かどうかも、豊かな人間関係を維持する上で大切な要素です。
4. 必ず現地を見学し、雰囲気を体感する
パンフレットやウェブサイトの情報だけで判断せず、必ず現地へ足を運びましょう。
共用施設の清潔さや管理状態、そして何より、すでに入居している方々の表情や住宅全体の雰囲気を自分の目で確かめることが重要です。
可能であれば体験入居を利用し、実際の暮らしを肌で感じてみることを強くお勧めします。
5. 契約形態とサービス内容を確認する
分譲の場合は資産価値や管理規約を、賃貸の場合は契約期間や退去条件をしっかり確認しましょう。
どちらのタイプでも、提供されるサービスが本当に自分にとって必要なものか、将来介護が必要になった際のサポート体制はどうなっているのかを細部まで確認することが、後悔しないための鍵となります。
具体的なチェックリストや見学時のポイントはこちらの記事で詳しく解説します。
まとめ
シニア向け住宅には、資産として所有できる「分譲マンション」と、ライフステージの変化に合わせやすい「賃貸住宅」という、大きく二つの選択肢があります。
分譲は自由度の高さと資産性が魅力ですが、初期費用は高額です。一方、賃貸は初期費用を抑えられ住み替えも容易ですが、資産にはなりません。
どちらが良いというわけではなく、ご自身の健康状態やライフプラン、そして最も重要な資金計画に合ったものを選ぶことが大切です。
この記事でご紹介した視点を参考に、ぜひ複数の物件を比較検討してみてください。