近年は、「老後2,000万円問題」といった言葉を耳にする機会も増え、生活費に対する不安から将来は都営住宅に入居したいと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、都営住宅には入居条件が設定されているため、全ての希望者が住めるわけではありません。 そこでこの記事では都営住宅への入居を検討している高齢者の方に向けて、都営住宅の基本的な情報をまとめました。都営住宅の概要から、高齢者向け都営住宅の種類、入居資格、申込方法、さらには都営住宅以外の選択肢まで詳しく解説していきます。 都営住宅とは?都営住宅とは、公益住宅法にもとづいて東京都が管理する賃貸住宅で、収入が低い方や住宅を確保することが難しい方を対象に、低廉な家賃で提供されています。 都営住宅は、高齢者や障害者、ひとり親世帯など、住宅の確保に困っている方々を支援する役割を担っています。 その中でも、高齢者向けの都営住宅には「単身者向シルバーピア」「二人世帯向シルバーピア」「高齢者等ふれあい同居」の主に3つのタイプがあります。シルバーピアとはシルバーピアは、65歳以上のひとり暮らしや二人世帯の方で住宅にお困りの方が、自立して、安全かつ快適な日常生活が送れる住宅です。室内には手すりや緊急通報装置など、高齢者に配慮した設備が設置されています。 生活相談や団らん室など、交流を促進するための共用施設が併設されている場合もあります。 ワーデン(生活協力員)や LSA (ライフサポートアドバイザー) が、入居者の安否確認や緊急時の対応、生活相談などを行うのが特徴です。高齢者住宅サービスセンターが併設または近接しており、必要に応じて福祉サービスを受けられます。 高齢者等ふれあい同居募集とは高齢者等ふれあい同居募集とは、家族向けの広い住戸を有効活用して、親族でない高齢者の方同士などが共に暮らすことができる制度です。この制度は、高齢者同士の助け合いを促進し、孤独死などのリスクを軽減することを目的としています。また、都営住宅への入居を希望する単身高齢者等の入居機会の確保を図るため、 令和4年12月から開始されました。 高齢者向け都営住宅に入居するには?高齢者向け都営住宅への入居資格や申込方法は希望するタイプによっても異なります。単身の場合、年間所得が約256万8千円以下の方のみが対象となっているため、ご自身が条件にあてはまるのかどうか確認したうえで申込手続きを進めるようにしましょう 単身の場合の金額であることと、念のため金額は東京都のサイトと一致していた方が良いかもしれません。 シルバーピア(単身者向け、二人世帯向け)の入居資格シルバーピアの入居資格については以下のとおりです。単身者向と二人世帯向で多少異なる部分はありますが、基本的な条件は同じです。<共通> 65歳以上であること 東京都内に継続して3年以上居住していること 所得が定められた基準内であること 住宅に困っていること 暴力団員でないこと<単身者向>・配偶者がいないこと、かつ単身で居住していること<二人世帯向>・65歳以上の同居親族がいること ※本記事執筆時点の情報となりますので、詳細は東京都のホームページで最新情報をご確認ください参照:東京都住宅政策本部|都営住宅の入居資格(単身者向シルバーピア)参照:東京都住宅政策本部|都営住宅の入居資格(二人世帯向シルバーピア) 高齢者等ふれあい同居募集の入居資格60歳以下の高齢者等ふれあい同居募集の入居資格は以下のとおりです。東京都内に継続して3年以上居住していること 配偶者(パートナーシップ関係の相手方を含む)がいないこと、かつ単身で居住していること 60歳以上であること所得が定められた基準内であること住宅に困っていること(住宅や土地の所有者、公的住宅の名義人でないこと)入居する者全員が親族でないこと暴力団員でないこと介護者と同居する場合、介護を必要としていること ※本記事執筆時点の情報となりますので、詳細は東京都のホームページで最新情報をご確認ください参照:東京都住宅政策本部|都営住宅 高齢者等ふれあい同居の入居者募集 所得基準を満たしているかどうかの判別は特に複雑なため、以下のシミュレータを活用してみてください。参照:都営住宅 所得基準判定 シミュレータ|JKK東京【東京都住宅供給公社】 「シルバーピア」申込方法と入居までの流れ1.募集住戸の確認シルバーピアは定期募集となっていて、毎年2月上旬と8月上旬に募集が実施されます。インターネットでは都営住宅入居者募集サイトや各自治体のホームページにて募集情報を確認できます。自治体によっても異なりますが、募集期間中であれば区役所にて冊子を配布しています。詳細はお住まいの自治体のホームページ案内をご確認ください。2.申込み都営住宅への申込みは、オンラインと郵送の2種類で行われています。<オンラインの場合>オンラインでの申込みの場合は都営住宅入居者募集サイトに利用者登録が必要となります。こちらのページから登録を進めた後、こちらのページから住宅を検索して申込みを進めましょう。オンラインでの申込み手続きについての不明点などが出てきた場合には、以下のコールセンターにお問い合わせください。お問い合わせ先東京都住宅供給公社都営住宅入居者募集サイトコールセンター☎0570-050-410 ☎03-6812-1371午前9時~午後6時(土・日・祝日・年末年始を除く)参照:申込みの流れ|都営住宅入居者募集サイトについて|東京都住宅政策本<郵送の場合>東京都住宅供給公社 都営住宅募集センター、各窓口センター、都庁、区役所、市役所、町村役場にて申込書が配布されています。配布期間中は東京都住宅供給公社のこちらのページからも申込書がダウンロードができます。住民票など必要な書類を準備して申込書を郵送にて提出してください。切手が貼られていない場合や、切手料金が不足している場合には通知はがきが届かないそうなので注意しましょう。3.抽せん番号の確認オンライン申込みの場合はメールにて抽せん番号の案内があります。郵送で申込みをした場合には、後日郵送されてくる通知はがきに抽せん番号の記載があります。4.抽せん結果の確認抽せん番号の通知と同じく、オンライン申込みの場合はメールで、郵送の場合ははがきにて抽せん結果を知ることができます。また、東京都住宅供給公社のWEBサイトからも抽選結果を確認することができます。5.入居資格審査必要な書類を都営住宅募集センターにご提出ください。合格者には、書類提出後原則1ヶ月で通知が発送されます。6.入居手続き・鍵の受け渡し・入居使用許可日、入居予定住宅の号棟・部屋番号、住宅の下見期間等が書面にてお知らせされます。必要書類発送のほか、住宅使用料2ヶ月分の保証金も支払いが必要となります。あわせて緊急連絡先の登録も必要となるので、あらかじめ想定に入れておきましょう。ちなみに、下見ができるのは、平日の指定期間のうち1回のみとなっています。必要書類を発送したら、後日「住宅私用許可書」が郵送されるため、そちらを管轄の窓口センターに持参して鍵を受け取ります。「高齢者等ふれあい同居募集」申込方法と入居までの流れ1.申込み<オンラインの場合>こちらのWEBサイトから、「06_80都営住宅【募集】高齢者ふれあい同居募集」のタブをクリックして、申込み手続きを進めてください。高齢者等ふれあい同居募集は、シルバーピアとは異なり、いつでも申込みができる先着順となっています。<郵送の場合>以下のセンターまで問い合わせをして、申込書・返信用封筒・返信締切⽇のお知らせを郵送にて受け取ってください。東京都住宅供給公社都営住宅募集センター午前9時〜午後6時(⼟⽇祝⽇・年末年始を除く) 03−3498−8894もしくは、都庁、東京都住宅供給公社 都営住宅募集センターでも募集案内が配布されています。2.入居資格審査申込書類をもとに審査が行われます。合格者にははがきで通知が発送されます。3.入居手続き・鍵の受け渡し・入居使用許可日、入居予定住宅の号棟・部屋番号、住宅の下見期間等が書面にてお知らせされます。必要書類発送のほか、住宅使用料2ヶ月分の保証金も支払いが必要となります。こちらも下見ができるのは、平日の指定期間のうち1回のみとなっています。必要書類を発送したら、後日「住宅使用許可書」が郵送されるため、そちらを管轄の窓口センターに持参して鍵を受け取ります。 都営住宅への入居で注意すべきポイント都営住宅は、家賃が安く、高齢者でも年齢で入居を断られないなど、メリットが多い住宅ですが、住み替えを検討するにあたっては認識しておくべきポイントも存在します。住みたいエリア・希望のエリアに供給がない都営住宅は、供給数が限られているため、あなたの希望するエリアや間取りの住宅が見つからない場合があります。 抽選倍率が高い人気のエリアや物件では、倍率が200倍を超えることもあり、平均でも倍率30倍程度(令和6年8月実績)と入居が難しい場合が多いです。 入居までに時間がかかるシルバーピアについては募集が毎年2月と8月と時期が定められています。いつ入居できるか予想がつかないため、将来の予定が立てにくい場合があります。 古い住宅が多い都営住宅の建設年度は1954年から2019年までありますが、築年数の中央値は40年となっています。そのため設備が老朽化している場合があり、バリアフリー対応が不十分であるなど高齢者にとっては生活がしにくい建物である場合もあります。 参照:都営住宅団地一覧|都営住宅等の管理|東京都住宅政策本部自治会活動の負荷自治会活動への参加が義務付けられている場合があり、負担に感じる場合があります。 まとめここまで高齢者向け都営住宅の入居資格や申込方法、そして注意しておくべきポイントについても解説してきました。調べてみると都営住宅の入居条件が当てはまらないという方もいらっしゃったのではないでしょうか。都営住宅は高齢者にとって魅力的な選択肢のひとつですが、ご自身が求めているような住まいではないという可能性もあります。これまでの暮らしを踏まえ、今後はどのような暮らしをしていきたいかをしっかり考え、最適な住み替え先の検討をおこなってみてください。