東京都の高齢者人口は増加傾向にあり、単身高齢者世帯は都内だけでも約188万世帯にも上り、そのうち賃貸住宅に住む方も年々増えています。
東京都消費生活相談窓口には年間3万件以上の住宅や生活に関する相談が寄せられており、そのうち高齢者の住み替え相談も急増しています。
背景には、築40年以上のアパートが東京都内には多く、老朽化により取壊しや立ち退きの発生が避けられない現状があります。
これまでの生活や思い出が詰まった住まいを離れる不安は大きいですが、実際に立ち退きを要求されたときにどうすればよいのか解説していきます。
立ち退きが発生する背景
アパートなど賃貸住宅に住む高齢者に立ち退きが発生する主な背景には、物件の老朽化による取壊しや、所有者の事情(相続や売却、再開発)、住人側の家賃滞納や契約違反などがあります。
特に都内では再開発が計画されることが多く、今後も立ち退きが様々なエリアで発生することでしょう。
貸主側が立ち退きを請求する場合は「正当事由」が必要とされていますが、物件の耐震性や安全性、資金調達など多面的な事情がからみ合っています。
立ち退きの増減傾向について
2023年にR65株式会社が実施したアンケート調査によると、65歳を超えて賃貸住宅のお部屋探し経験のある高齢者のうち、7.6%が「立ち退き」を理由に部屋探しをすることになったと回答しています。
決して多い割合ではないですが、賃貸住宅に住む一定数の高齢者は実際に立ち退きがきっかけで部屋探しをしていることを示しています。
新宿区の住宅相談員研修会資料では、高齢者の住み替え相談件数が増加していると報告されており、令和6年度の住宅相談412件のうち住み替え相談が326件を占めています。
さらに「居住する民間賃貸住宅からの立ち退きを余儀なくされた高齢者の住み替え相談件数が増加している」との記載もあることから、今後も都内の至る所で立ち退きが発生してくることが予測できます。
参照元:「65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題」に関する実態調査」|R65株式会社
参照元:住宅相談員研修会 資料4|新宿区
高齢の場合の立ち退きにおける課題
高齢者が立ち退きを迫られた際に直面する最大の課題は、「新たな賃貸住宅の確保が著しく困難」であることです。
主な理由は次の通りです。
定年退職などで収入が安定せず、家賃支払いの審査に通りにくい
孤独死など健康・生活上のリスクを危惧され、大家側が敬遠する傾向が強い
保証人の確保が難しいケースが多く、必要な連帯保証人がいない場合が障壁となる
長年の生活で家財道具など荷物が多く、引越しの負担が大きい
これらの背景から、部屋探し自体が非常に難しく、加えて賃貸住宅の審査基準が高いことが現実的な問題となっています。
また年齢を重ねれば重ねるほど、住み慣れた環境から離れることには抵抗がでてきます。現在都内にお住まいの方の場合、その後も同じく都内のできれば同一エリアで物件を探すことになるため、候補となる物件数自体が非常に限られてしまうのです。
立ち退き要求された場合の解決策
立ち退きを要求されたとき、特に高齢者の場合は不安や焦りを感じるのは当然です。
しかし、適切な手順を踏むことで、より良い条件での住み替えが可能になります。
まずは落ち着いて状況を整理する
急な立ち退き要求に焦る気持ちはわかりますが、まずは気持ちを落ち着けて立ち退きの条件を確認し、これからどう対応していくべきか検討しましょう。
賃貸人から提示された条件にすぐに同意するのはおすすめできません。適正な補償を受けるためにも、返事は一旦保留し、専門家への相談を検討しましょう。
自治体の相談窓口に連絡する
定期的な対面相談会や電話相談窓口が用意されている自治体もあります。
中央区や江東区では「住み替え相談」を定期的に開催し、不動産協会と連携した相談を受け付けています。
相談内容に応じて賃貸借保険や緊急通報システムの案内、成約協力金(貸主への一時金)などを提案してもらえます。
また、東京都が指定する「居住支援法人」も活用ができます。「居住支援法人」では高齢者など住宅の確保に配慮を必要とする方々が民間の賃貸住宅への円滑に入居できるよう支援を行う法人です。
住宅相談や賃貸住宅への円滑な入居に係る情報提供・相談などを行うことができます。
こちらのリストに掲載されている法人に連絡してみてください。
参照元:お部屋探しサポート事業|江東区
参照元:中央区ホームページ/住み替え支援
自治体の住み替え支援を確認する
都内でも一部の自治体では、高齢者世帯が立ち退きや住み替えを迫られた場合、転居費用や家賃の一部を助成する制度があります。
北区「高齢者世帯住み替え支援助成事業」では、区内で民間賃貸住宅に住む高齢者が住み替えする際に最大5万円が助成されます。
新宿区「住み替え居住継続支援」は、賃貸住宅の取り壊しなどで転居する高齢者世帯に対し、転居費用の一部を助成しています。
豊島区「高齢者世帯等住み替え家賃助成制度」では、取り壊しによる立ち退きを受けた場合、転居後の家賃と基準家賃との差額を最大月額15,000円まで、最長7年間助成しています。
支援内容は自治体ごとに異なるため、役所・区役所・市民センターなどの担当窓口に直接相談してみてください。
参照元:住み替え居住継続支援:新宿区
参照元:高齢者世帯等住み替え家賃助成制度|豊島区公式ホームページ
民間の不動産会社への相談
行政支援に加えて、民間不動産会社の中にも高齢者向け賃貸物件を積極的に紹介し、保証人不要サービスや見守りサービスを取り入れている企業が存在しています。
自治体窓口から紹介してもらった不動産会社だけでなく、近隣にある不動産屋にもいくつか相談をしてみると、積極的に対応してくれる担当者を見つけられる可能性は高まります。
自治体窓口の対応に不安がある場合は、こうした専門業者の力を借りることも有効です。
シニア向け賃貸という選択肢
近年、シニア向け専用賃貸住宅の数は増加傾向にあり、「高齢者可」物件を扱う専門サイトやサービスも充実しています。
シニア向けの賃貸物件は、見守りサービス等が付帯しているお部屋が多く、高齢者に配慮された室内設備や、生活相談サービスとの連携など安心して生活できる環境が整ってることが多いです。
通常の賃貸やアパートと比べると、立ち退きや年齢を理由とした退去などを求められる可能性も少なくなるため、長期間安心した暮らしを続けていきたい方にはおすすめの選択肢です。
まとめ
東京都内で立ち退きを求められている高齢者には、数多くの困難があります。
ですが、自治体支援や民間不動産会社の相談窓口、シニア向け賃貸物件の活用によって、より安心・快適な住み替えの道筋を描ける時代が到来しています。
困った時は自らの力で解決しようとせず、自治体の相談窓口や居住支援法人にコンタクトを取り、行政・民間両方の支援を活用して自身の住まいと生活環境を守るための一歩を踏み出してみてください。