「遠方で一人暮らしをしている親のことが、年齢を重ねるにつれて心配になってきた…」そんな思いを抱えている方は多いのではないでしょうか。電話では元気そうにしていても、「もしもの時にすぐ駆けつけられない」「今後、介護が必要になったらどうしよう」と不安が募ることもあるでしょう。 仕事や家庭の忙しさの中で、親の暮らしをどう支えていくかは大きな悩みです。そんな中、「同居は難しいけれど、都内で近居できれば安心かもしれない」と考え始める方が増えています。しかし、親の気持ちや住み替えの負担、経済的な問題など、簡単に決断できない現実もあります。 この記事では、同じような悩みを持つあなたに向けて、親との近居に関する社会の現状やメリット・デメリットを整理し、近居を前向きに検討するためのヒントをお伝えします。 高齢化社会における「親との近居」ニーズの高まり日本は世界有数の高齢化社会を迎えています。総務省統計局のデータによれば、令和7年10月時点で65歳以上の高齢者人口は約3,620万人、総人口の29%を占めており、今後も増加が見込まれます。当然ながら、高齢者の単身世帯も増加しています。令和5年版高齢社会白書によると、高齢単身者世帯は2020年の実績値で671万世帯にのぼっていて、2040年まで上昇することが推測されています。こうした現状を背景に、遠方で一人暮らしをしている親を呼び寄せて「近居」するという選択肢が、50代を中心とした子世帯の間で注目を集めています。参照元:総務省「人口推計」令和7年10月1日(推計値)参照元:令和5年版高齢社会白書 親との近居に関する社会の現状と最新傾向近居世帯の増加とその背景総務省統計局が平成25年に実施した「住宅・土地統計調査」によると、高齢者世帯のうち、別世帯の子と「近居」(片道15分未満の場所に在住)している割合は、単身高齢者で21.3%、高齢夫婦世帯で25.2%でした。また、近居の定義を「片道1時間未満の場所に居住」と広げると、約4割の高齢者が子世帯と近居していることになります。参照元:平成25年「住宅・土地統計調査」|総務省統計局少し古いデータではありますが、調査5年前(平成20年)のデータと比較すると、単身高齢者世帯も高齢夫婦世帯もそれぞれ同居率は約1%減少し、近居は1%の増加となりました。このように徐々に近居志向が高まっている背景には、親世帯・子世帯双方のメリットがあると考えられます。親世帯にとっては、加齢による不安や健康リスクへの備え、子世帯にとっては育児や家事のサポート、緊急時の対応のしやすさが挙げられます。また、同居に比べてプライバシーや生活リズムを保ちやすいことも、近居が選ばれる理由です。参照:平成25年「住宅・土地統計調査」|総務省統計局 近居の理想と現実参照元:令和6年版高齢社会白書内閣府による「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」によると、理想として「近居」を挙げる人はここ数年でも増えています。しかし、先ほど挙げた「住宅・土地統計調査(平成25年)」のデータをみても、実際に近居を実現している世帯はまだ全体の2割程度にとどまっていると推測されます。その理由として、親が住み慣れた土地を離れることへの心理的ハードルや、都市部の住宅事情、経済的な負担などが挙げられます。また、親自身の意思や健康状態、地域コミュニティとのつながりも重要な要素となっています。一方で、近年は高齢者向けの賃貸住宅やサービス付き高齢者向け住宅など、シニアが安心して暮らせる住まいの選択肢が増えており、都内でもバリアフリーやセキュリティに配慮した物件が増加しています。こうした環境が整備されてきたことで、親を呼び寄せて近居するハードルが徐々に下がってきたとも言えるでしょう。参照元:「令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査」|内閣府 親との近居のメリットすでに近居を検討されている方にとっては、親との近居メリットはイメージしやすいかと思います。近居の実現に向けて、親や家族を説得する際にも利用できるので、改めて近居のメリットを確認していきましょう。1. 互いのプライバシーと適度な距離感近居の最大のメリットは、同居ほど密接ではなく、互いの生活リズムやプライバシーを尊重しながらも、必要な時にサポートし合える「ちょうどよい距離感」を保てる点です。同居の場合、生活習慣や価値観の違いからストレスやトラブルが生じやすいですが、近居であればそれぞれのペースを守りながら、無理なく交流できます。2. 緊急時や日常のサポートがしやすい親が体調を崩した時や、ちょっとした困りごとが発生した際、すぐに駆けつけられる距離にいることで安心感が生まれます。また、子世帯が多忙な時や育児で困った時に、親に子どもの面倒を見てもらうなど、双方向のサポートが可能です。3. 新しい人間関係や趣味の機会が広がる親が新しい土地で近居を始める場合、地域の高齢者向けサービスや趣味のサークル、ボランティア活動などに参加しやすくなります。これにより、親の自立心や社会的つながりを維持しつつ、充実したシニアライフを送ることができます。4. 行政や地域のサポートが受けやすい都市部では、シニア向けの見守りサービスやデイサービス、地域包括支援センターなどの支援体制が整っています。近居によりご家族もサポートしてあげられることで、これらのサービスを活用しやすくなります。5. 家族機能の向上と幸福度の増加近居によって親世帯と子世帯の交流頻度が増え、家族機能が高まることが研究で示されています。これは、家族全体の幸福度や将来の安心感にもつながると考えられます。 親との近居のデメリット近居にはメリットがある一方で、当然デメリットも存在します。ご自分の家庭にあてはめた際に起こり得る事象であるのか、それぞれの項目が許容ができるのかなど改めて考えてみてください。1. 干渉やストレスのリスク近居は適度な距離感を保てる一方で、親や子が頻繁に訪問しすぎたり、生活に口出しをしたりすることで、ストレスやトラブルが生じるケースもあります。特に義理の親子関係では、配偶者のストレスや家庭内の摩擦が生じやすくなります。2. 介護負担の偏り親が将来的に介護を必要とする場合、近居している子世帯に介護負担が集中しやすい傾向があります。兄弟姉妹がいる場合でも、「近くに住んでいるから」という理由で介護を任されてしまい、金銭的・精神的な負担が増えることもあります。3. 親の環境適応ストレス長年住み慣れた土地を離れて新しい環境に移ることは、高齢者にとって大きなストレス要因となります。地域コミュニティや友人関係が途絶えることで、孤独感や精神的な負担が増すこともあるため、親の意思や適応力を十分に考慮する必要があります。4. 緊急時の対応遅れ同居と比べると、近居では親の体調急変や事故などにすぐ気付けないリスクが残ります。特に単身高齢者の場合、日常的な見守りや安否確認サービスの活用が不可欠です。5. 経済的負担都内で新たに住居を確保する場合、家賃や引越し費用、生活費などの経済的負担が増加します。また、親世帯が孫の世話や家族行事への参加機会が増えることで、交際費や交通費などもかさみやすくなります。 近居を成功させるためのポイントと具体的なステップ近居を円滑に実現し、家族全員が満足できる関係を築くためには、いくつかのポイントが重要です。まず、お互いの生活スタイルや価値観を尊重し、必要以上に干渉しない適度な距離感を意識することが大切です。親子であっても、それぞれが独立した生活者であることを認め合い、困った時にすぐ助け合える一方で、普段は自分たちの暮らしを大切にする姿勢が、長く良好な関係を保つ秘訣となります。次に、近居を始める前に家族間でしっかりと話し合い、将来の生活や介護、住まいの希望などについて意思疎通を図ることが必要です。親世帯・子世帯ともに納得できる住まい方やサポートのあり方を共有し、ルールや役割分担を明確にしておくことで、後々のトラブルを回避できます。実際に、私たちが提供するシニア向け賃貸アンジュプレイスに内見いただくご家族でも、親子のコミュニケーションがうまくいかずに近居を諦められるケースは発生しています。最後に、住まい選びや住み替えの際は、周辺環境や生活利便性、医療機関へのアクセスなどを十分に調査し、無理のない範囲で快適に暮らせる場所を選びましょう。体力や判断力が十分なうちに、計画的に情報収集や準備を進めておくことが、理想的な近居生活への第一歩となります。 まとめ:親との近居は「安心」と「自立」のバランスが鍵親を呼び寄せて近居するという選択は、単なる距離の問題ではなく、家族の在り方や将来の安心、親の自立と尊厳をどう守るかという課題でもあります。近居には、適度な距離感を保ちながらサポートし合えるという大きなメリットがある一方で、干渉や介護負担、経済的・精神的なリスクも伴います。近居を成功させるためには、親子でしっかりと話し合い、目的や役割分担、住まい選び、地域サービスの活用など、事前の準備と合意形成が不可欠です。親の意思や自立心を尊重しつつ、家族全体が安心して暮らせる新しいライフスタイルを築くための一歩を、ぜひ踏み出してみてください。東京都内の都心部で、遠方の親の呼び寄せを検討されている方はぜひリコーリースのシニア向け賃貸住宅アンジュプレイスも選択肢に加えてみてください。今回の記事が、皆様の住まい選びにおいて、少しでもお役に立てれば幸いです。