高齢者向け賃貸住宅やサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、老人ホームなどに入居を検討していると、「身元引受人が必要です」と案内されることが一般的です。しかし「身元引受人」とは具体的にどんな存在なのか、その定義や役割がはっきりわからず、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。この記事では、身元引受人の定義や役割について、公的資料や信頼できる情報源をもとに詳しく解説します。さらに、なぜ身元引受人が求められるのか、身元引受人がいない場合の対応策まで、具体的にご紹介します。身元引受人とは?公的資料に基づく定義と役割公的資料にみる「身元引受人」の定義実は、「身元引受人」は法律上で明確に定義されている用語ではありません。主には病院を退院したり、施設を退所したりする際に本人を引き受ける人の意味として利用されています。令和4年に出された総務省の資料内では、保証人、身元保証人、身元引受人、連帯保証人など名称のいかんを問わず、病院・施設で慣習的に用いられている「身元保証人」を指す。と記されており、「身元引受人」と「身元保証人」は同義といった整理がされています。"病院・施設で慣習的に用いられている"と表現されるように、「身元引受人」は主に実務上の必要性から求められる存在であり、施設ごとに身元引受人の条件や役割が異なる場合があります。引用元:高齢者の身元保証に関する調査(行政相談契機)-入院、入所の支援事例を中心として〔調査結果の公表〕|総務省身元引受人の主な役割言葉としては明確に定義づけがされていない中で、実際のところ「身元引受人」はどのような役割を担っているのでしょうか。身元引受人の役割は多岐にわたりますが、リコーリースのシニア向け賃貸住宅アンジュプレイスでは、主に以下のような役割を挙げています。緊急連絡先緊急時や安否確認が必要な場合に、物件内へ立ち入ることや、管理会社・サービス事業者からの連絡や相談に誠実に対応すること。解約手続きの代行・入居者が病気や入院などで契約の解約が必要になった場合、本人に代わって解約手続きを行うこと。ペットの引き取り・入居者が飼育していたペットについて、飼育できなくなった場合や契約終了時に、責任と負担をもって速やかに引き取ること。入居者への伝達・コミュニケーション・緊急時や管理会社からの連絡事項(苦情等を含む)を受け取り、速やかに入居者へ伝達すること。契約終了時の諸対応・入居者が死亡した場合や契約終了時に、身柄の引取りおよび残置物(家財・物品等)の撤去、物件の明け渡しを自身の費用と責任で行うこと。トラブル時の対応・入居者がトラブルを起こしてしまった場合など、みまもりサービス事業者または在宅相談等サービス業者からの連絡や相談に応じ、適切な対応および解決に努めるものとします。上記はあくまでも役割を一部抜粋した内容となります。その他の詳細な内容については入居時に契約書面をご確認ください。また、上記はあくまでもアンジュプレイスの一例となりますので、入所される施設や契約先によっても身元引受人の役割が異なる可能性がございます。保証人との違い身元引受人と保証人は、役割や責任の範囲が異なります。保証人は主に金銭的な連帯保証を担い、入居者が家賃や利用料を滞納した場合や、施設・設備に損害を与えた際の補填など、契約上の債務を法的に保証する立場です。一方、身元引受人は本人では対応できなくなった場合の緊急時の連絡先、入院・退去時の手続き、亡くなった際の身柄や荷物の引き取りなど、生活面や緊急時のサポートが主な役割です。つまり、保証人は「お金の保証」、身元引受人は「生活や身柄のサポート」といった違いがあります。ただし、施設や契約によっては両者が同じ意味で用いられる場合もあるため、契約内容をよく確認することが大切です。身元引受人が必要とされる理由施設・住宅側のリスク管理高齢者施設や賃貸住宅では、入居者の認知機能低下や急病、事故、死亡など、さまざまなリスクが想定されます。施設側は、こうした事態が発生した際に迅速かつ確実に対応できる体制を整える必要があり、そのために身元引受人の存在が求められます。たとえば、本人が入院や退去を余儀なくされた場合、身元引受人がいなければ手続きが滞る恐れがあります。また、死亡時の遺体や遺品の引き取り、費用精算なども、身元引受人がいないと施設側が対応に苦慮するケースが多いのです。入居者・家族の安心感身元引受人がいることで、入居者本人やその家族も「もしもの時に頼れる人がいる」という安心感を得られます。特に認知症や重度の病気を抱える高齢者の場合、身元引受人の存在は重要な役割を果たしています。身元引受人がいない場合の解決策近年、身元引受人を頼める親族や知人がいない、あるいは高齢で引き受けられないというケースが増えています。主な理由は、家族や親族が遠方に住んでいる、親族関係が希薄、身寄りがない、友人や知人に迷惑をかけたくない、などです。こうした背景から、身元引受人がいない場合でも安心して入居できる仕組みが社会的に求められ、実際に整備が進んでいます。身元保証会社の利用近年では、身元保証会社と呼ばれる法人が、従来は親族や知人が担ってきた身元引受人・身元保証人の役割を有償で引き受けるケースが増加しています。これらの会社は、入居時の身元保証や緊急時の対応、死後の手続き、金銭的な保証まで幅広いサポートを提供しています。国や民間事業者による環境整備こうした状況を受けて、2024年6月には内閣府をはじめとした関係省庁が「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を策定しました。このガイドラインは、高齢者等終身サポート事業者が適正に事業運営を行い、利用者が安心してサービスを利用できる環境を整えることを目的としています。ガイドラインでは、サービス内容の明確化や契約時の説明義務、利用者保護の観点からのチェックリストの活用などが盛り込まれており、契約内容の透明性やトラブル防止が強く求められています。また、身元保証会社を利用することで、身元引受人がいなくても入居できる施設や住宅が増えています。リコーリースのシニア向け賃貸住宅「アンジュプレイス」では、原則として入居者より年齢の低い三親等以内の親族が身元引受人となりますが、身元引受人がいない場合でも当社指定の身元保証会社を利用することでご入居が可能です。※入居者より年齢の低い三親等以内の親族:子、弟妹、孫、甥・姪このように、社会的な変化や公的なガイドラインの整備によって、身元引受人がいない高齢者でも安心して住まいを確保できる時代が近づいてきています。参照元:高齢者等終身サポート事業に関する事業者ガイドラインについて | 消費者庁身元引受人を選ぶ際の注意点と今後の住まい選び身元引受人の条件や責任範囲身元引受人には法律上の明確な資格要件はありませんが、実務上は「本人を引き取り、監督できる立場の人」が求められます。施設によっては、親族や一定の収入・資産を持つ人を条件とする可能性もあります。また、身元引受人の責任範囲は施設ごとに異なるため、契約前に必ず確認しましょう。今後の住まい選びのポイント高齢者の住まい選びでは、身元引受人の有無が大きなハードルとなることがあります。しかし、リコーリースのように「身元保証会社の利用可」といった新しい選択肢が広がっています。必要に応じて、こうしたサービスを積極的に活用し、自分や家族に合った住まいを選ぶことが重要です。まとめ身元引受人とは、本人が高齢者施設や賃貸住宅に入居する際、緊急時や判断能力低下時、死亡時などに必要な手続きや意思決定を代行し、責任をもって対応する人のことです。法律上の明確な定義はありませんが、実務上は施設や病院で広く求められています。近年は身元引受人がいない高齢者も増えており、身元保証会社の利用や行政への相談など新しい解決策が登場しています。リコーリースのシニア向け賃貸住宅では、身元引受人がいなくても当社指定の身元保証会社を利用することで入居が可能です。(身元保証会社の利用は有償となります)今後の住まい選びでは、こうした最新のサービスや制度を上手に活用し、ご自身やご家族が安心して暮らせる環境を整えていきましょう。