「70代の母親、ひとり暮らしで大丈夫かしら…」「でも、同居となると生活費はどうなるの?夫や家族に負担をかけたくない…」親を呼び寄せて同居する場合、「生活費はどれくらい増えるのか」「誰がどのくらい負担すべきか」といった悩みは尽きません。本記事では、信頼できる公的データをもとに、親との同居で実際にどれくらい生活費が増えるのかを具体的に試算し、家族関係を円満に保つための費用分担やコミュニケーションのヒントをお伝えします。不安を「具体的な計画」に変え、納得できる一歩を踏み出すための指針としてご活用ください。【データで見る】親との同居で、生活費は「いくら」増えるのか?1. 70代・単身世帯の平均的な生活費総務省「家計調査年報(家計収支編)2024年」によると、65歳以上の単身無職世帯の月平均可処分所得は121,469円、月平均消費支出は149,286円で、毎月27,817円の赤字です。消費支出の主な内訳は以下の通りです。費目月額(単身高齢者)食料42,085円住居12,693円光熱・水道14,490円家具・家事用品6,596円被服及び履物3,385円保険医療8,640円交通・通信14,935円教育15円教養娯楽15,492円その他の消費支出30,956円合計149,287円※住居費は持ち家率が85.2%と高いため平均12,693円と低めですが、賃貸の場合は別途家賃が必要です。参照元:総務省「2024年(令和6年)家計調査報告」参照元:総務省「2024年 家計調査 詳細結果表」2. 娘世帯(3人家族)の生活費同じく2024年の家計調査によると、3人家族の生活費平均は月310,096円です。費目月額(3人家族)食料87,876円住居19,278光熱・水道24,340円家具・家事用品13,302円被服及び履物9,970円保健医療15,604円交通・通信42,780円教育12,216円教養娯楽28,045円その他の消費支出56,684円合計310,096円参照元:総務省「家計調査 二人以上の世帯・勤労者世帯・勤労者世帯(うち世帯主が60歳未満)・無職世帯」3. 同居後(4人家族)の生活費試算4人家族の平均生活費は月341,400円とされています。3人家族と4人家族の差額は31,304円です。ただし、同居による「人数増加分」は単純な合算ではなく、親の住居や光熱・水道に関する費用は減少する可能性があります。また、総務省「家計調査年報(家計収支編)2024年」によると、65歳以上の単身無職世帯は毎月27,817円の赤字ですが、同居によって親の住居(13,677円)と光熱・水道(14,528円)に関する支出が減少することを考えると差額分は親の可処分所得で賄える可能性があります。【表】親との同居による生活費シミュレーション費目① 単身65歳以上② 娘世帯(3人)現状③ 同居後の世帯(4人)試算④ 差額(増加額)食料42,973円87,876円96,328円+8,452円住居13,677円19,278円15,120円-4,158円光熱・水道14,528円24,340円24,593円+253円家具・家事用品6,735円13,302円13,029円-273円被服及び履物3,656円9,970円13,093円+3,123円保健医療9,102円15,604円14,022円-1,582円交通・通信15,984円42,780円51,087円+8,307円教育12円12,216円30,030円+17,814円教養娯楽16,311円28,045円33,980円+5,935円その他の消費支出31,624円56,684円50,116円-6,568円合計(目安)154,602円310,096円341,400円+31,304円参照元:総務省「2024年(令和6年)家計調査報告」参照元:総務省「家計調査 二人以上の世帯・勤労者世帯・勤労者世帯(うち世帯主が60歳未満)・無職世帯」【解説】表の数字の根拠とポイント食費は1人増で+8,000円程度ですが、まとめ買いや調理の効率化で1人あたりの増加は抑えられます。水道・光熱費は高齢者が在宅時間が長い場合、冷暖房や給湯の使用が増えやすく、増加が見込まれます。通信費は家族でインターネットや電話をシェアすることで、1人あたりの負担は減少しする可能性があります。交通費は通院や外出の付き添いが増える場合、やや増加の可能性があるでしょう。保健医療費は高齢者の医療費が増える一方、世帯合算で見ると大きな変動はありません。日用品・雑費はまとめ買いで効率化できるため、1人あたりの増加は限定的です。【どう分担する?】揉めないための費用分担4つのパターン同居による生活費の「増加額」をどう分担するかは、家族の状況や価値観によって最適解が異なります。主な分担方法とその特徴を整理します。パターンA:親が定額を入れる「家賃・食費方式」親が毎月一定額(例:家賃相当+食費)を家計に入れる方式。【メリット】負担が明確でトラブルが少ない。親の年金範囲で無理なく設定しやすい。【デメリット】親の収入が少ない場合、子世帯の負担が大きくなりやすい。パターンB:費目ごとに分担する「担当方式」食費は親、光熱費は子世帯など、費目ごとに分担。【メリット】各自の負担感が調整しやすい。親の希望や得意分野を活かせる。【デメリット】細かい計算や管理が必要で、曖昧になると不満の原因に。パターンC:娘世帯が全て負担する「まるっとお任せ方式」生活費の増加分をすべて子世帯が負担。【メリット】親に気を遣わせずに済む。家計管理がシンプル。【デメリット】子世帯の負担が大きく、兄弟間で不公平感が生じやすい。パターンD:共通の財布を作る「共同会計方式」親と子世帯で共通の口座や財布を作り、そこから生活費を支出。【メリット】家計の透明性が高く、支出管理がしやすい。将来的な介護費用にも備えやすい。【デメリット】お金の使い方で意見が分かれるとトラブルになりやすい。要注意!月々の生活費以外にかかる「隠れ費用」同居を始める際は、毎月の生活費だけでなく、見落としがちな「隠れ費用」にも注意が必要です。初期費用(イニシャルコスト)引っ越し費用実家の片付け・処分費用住宅リフォーム・バリアフリー化家具・家電の買い替え将来の費用(フューチャーコスト)介護サービスの自己負担分(介護度によって変動)高額医療費(医療費控除や高額療養費制度の活用も検討)冠婚葬祭費、親の交際費や趣味費用介護離職や時短勤務による収入減これらの費用は、事前に家族で話し合い、必要に応じて積立や保険の活用も検討しましょう。【最重要】家族と円満に話し合うための3ステップ現状と希望を「見える化」する生活費の内訳や親の年金額、家族の収入・支出をリストアップし、現状を共有しましょう。どこまで親が負担できるか、どこから子世帯がサポートするかを「数字」で確認することが大切です。ルールを明確に決める生活費の分担方法や支払いのタイミング、家事や介護の役割分担も含めて、具体的なルールを決めましょう。曖昧なままにせず、必要なら書面に残すのも有効です。定期的に見直し・話し合いを行う親の健康状態や家族の状況は変化します。半年~1年ごとに家計や分担ルールを見直し、柔軟に調整しましょう。トラブルを未然に防ぐためにも、家族全員が本音で話せる場を作ることが大切です。まとめ親との同居は、家族の絆を深める一方で、生活費や役割分担など現実的な課題も伴います。本記事で紹介したデータやシミュレーションを参考に、まずは「わが家の場合」の増加額を冷静に把握し、家族で納得できる分担方法を話し合いましょう。お金の話は遠慮しがちですが、最初にルールを決めておくことで、後々のトラブルを防ぎ、家族全員が安心して暮らせる環境を作ることができます。「自分が我慢すれば…」と抱え込まず、家族みんなで支え合う仕組みを作ることが、長く円満な同居生活への第一歩です。