年齢を重ねた今、「希望の街で新しい生活を始めたい」と思っても、「高齢だから賃貸を断られるのでは?」と不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。周囲の噂話が気になり、一歩を踏み出せずにいる方も多いでしょう。本記事では、高齢者の賃貸物件探しにはどんな壁があるのか、そして今、高齢世代の住み替え事情はどう変化しているのか。公的データと体験エピソードを交え、等身大の現実をお伝えします。年齢で賃貸を断られるのか?現実の仕組みと統計賃貸物件の入居にあたって「年齢制限」が法律で明確に決められているわけではありません。つまり、法律上は何歳でも賃貸物件の契約は可能です。しかし現実には、60歳を超えた頃から賃貸物件の入居審査が厳しくなるケースが多発しており、株式会社R65が実施した調査によると、高齢者の約4人に1人が「年齢を理由に入居を断られた経験」を持っています。その背景には、所有者側が抱える「家賃の支払いへの不安」「孤独死や認知症リスク」などがあります。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会のアンケートによると大家さんの過半数以上が高齢者の入居に拒否感を持つとの結果もでており、「単身の高齢者や高齢者のみの世帯を不可」とするケースは実際に存在すると考えられます。一方で、こうした制限は必ずしも年齢のみで行われているわけではありません。多くの場合、定期収入や健康状態、連帯保証人の有無、見守りサービス利用の同意などが総合的に判断され、「年齢に関係なく借りられる」場合も増えています。参照元:高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2023年)|株式会社R65参照元:【令和3年度国土交通省調査】(公財)日本賃貸住宅管理協会の賃貸住宅管理業に携わる会員を対象にアンケート調査(資料内p5)高齢者の部屋探し、どれくらい大変? - 数字で見る現実賃貸物件サイトを見てみると、高齢者のお部屋探しの難しさのイメージがつくでしょう。公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会が運営する「ハトマークサイト」にて、都内23区の「高齢者相談可」の賃貸物件は49件しかありませんでした。(2025年7月24日時点)23区の物件のうち、わずか3.5%となっています。さらに「駅徒歩10分以内」の物件に絞った場合は、37件で2.7%となります。またこれらの物件はあくまでも「高齢者"相談可"」に分類されているだけであり、実際には申込をしても入居を断られてしまう可能性があります。このように、高齢者にとって生活しやすい物件はまだまだ少ないのが現状です。参照元:賃貸アパート・マンション、不動産情報検索サイト - ハトマークサイト|(公社)全国宅地建物取引業協会連合会体験エピソードから学ぶ - リアルな苦労と解決策ここからは、リコーリースのシニア向け賃貸住宅「アンジュプレイス」にご入居いただいたお客様のエピソードをご紹介します。最終的にはアンジュプレイスに入居していただいたものの、高齢者のお部屋探しのリアルな苦労が伝わるかと思います。エピソード1:80代女性「年齢が理由となって…」Aさん(80代女性)は、長年慣れ親しんだ家を離れ、近隣エリアの賃貸マンションでの新生活を考え始めました。しかし、インターネットで見つけて気になった多くの物件では、「高齢者可」や「高齢者歓迎」といった記載はありませんでした。ようやく絞り込んだ候補2件を不動産仲介会社に相談したところ、「どちらもうちでは仲介ができない物件」との回答でした。自ら掲載元の別不動産会社に直接電話をしましたが、年齢を理由に「入居はご遠慮ください」と断られてしまいました。最終的に仲介会社から紹介されたのは、エレベーターがなく浴槽もない物件だけ。生活しやすさを考えて申し込みは断念しました。エピソード2:70代男性「求めたのは安心できる住まい」Bさん(70代男性)は、自宅売却をきっかけに賃貸への住み替えを決意。信頼のある不動産会社にいくつか物件を提案してもらい、「これなら」と思える物件を見つけても、オーナー審査で断られる状況が続きました。似たようなことが3件ほど起こり、結局エリアを広げて改めて物件探しをすることに。せっかく手続きが進みそうになっても、最終段階で断わられることが多く「それが一番疲れる」と話していました。エピソード3:70代男性「200件以上の物件探し」Cさん(70代男性)は、自宅を売却したことで賃貸物件への住み替えをスタート。知り合いの賃貸仲介会社に依頼し、なんと約200件以上も物件情報を見てもらいました。しかし実際に内見できたのは6件ほどで、そのほとんどが「年齢」を理由に途中で断念せざるを得なかったのです。多くの選択肢があるようで、思うような物件にはなかなか縁がありませんでした。エピソード4:60代女性:「シニア可×ペット可の希少性」Dさん(60代女性)は、自宅の階段の上り下りの負担や設備の老朽化から住み替えを検討。シニア向け、かつペット可の条件を求めて数件の不動産会社に電話で問い合わせました。しかし、どの会社からも「エリアが限定されすぎているうえ、高齢とペット可の両立は難しい」と言われてしまいました。お部屋の希望条件を複数抱えると、選択肢はさらに限られる現状が浮き彫りになりました。高齢者の賃貸入居を巡る現状と今後の選択肢高齢者が賃貸物件入居の壁に直面する状況は厳しいものの、近年は社会全体で「高齢者向け住宅」の供給や、保証会社・見守りサービスの活用など支援も広がってきています。特に、高齢者向け賃貸住宅やサービス付き高齢者住宅といった選択肢を検討することで、年齢にとらわれず安心して暮らせる住まいを見つけやすくなりつつあります。自治体窓口での支援だけではなく、不動産会社に早めに相談することで希望に沿った物件を紹介してもらえる可能性は高まります。また、契約前には自身の条件や設備面をしっかりと確認し、不安な点は納得いくまで相談しましょう。まとめ高齢者の賃貸物件探しには「年齢」という見えない壁が依然として大きく立ちはだかりますが、時代とともに制度や支援サービスも充実してきています。体験談からも分かるように、ひとりで悩まず家族や専門家、高齢者向け住宅や各種支援制度を活用することで希望の住まいが見つかるチャンスは十分にあるでしょう。東京都内の都心部で住み替えを検討されているシニアの方は、ぜひリコーリースのシニア向け賃貸住宅アンジュプレイスも選択肢に加えてみてください。