60代はライフスタイルが大きく変わる節目の時期と言えるでしょう。子どもの独立や退職、夫婦二人だけの生活、あるいは一人暮らしになったことをきっかけに「もっと暮らしやすい環境へ移りたい」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。賃貸住宅なら立地や間取りを柔軟に選べ、持ち家管理の手間も減ります。しかし、60代であっても、いざ賃貸物件を探すと年齢を理由に入居を断られたり、希望条件の物件がほとんど見つからない現実に直面することがあります。そこで本記事では、データと市場動向を踏まえて60代の賃貸探しの課題を紹介し、将来も安心して暮らせる物件選びの視点を解説します。データで見る60代の住まいの実態まずは、現在の60代の方々がどのような住まいに暮らしているのか、数字から全体像を確認します。内閣府の令和6年度の調査によると、年代別で60-64歳では賃貸の割合が約20%、65-69歳になると賃貸の割合は約14%となります。賃貸住宅の中でも民営のアパートやマンションが多くを占めていることがわかります。8割以上の方は持家という結果ですが、賃貸物件を選択している方は一定数存在していることがわかります。参照元:令和6年度 高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)の結果賃貸入居を断られた割合のデータ令和5年の内閣府による調査では、「65歳になってから今まで入居を断られたことがあるか」という質問に対して「ある」と回答した方はわずか1.5%という結果になっています。65歳~69歳では1.1%と全体平均よりも小さい数字になっているのです。しかし、この質問の回答者は現在持家にお住まいの方も含まれています。実際に"賃貸"で部屋探しをされた方に絞ったデータとは数字が大きく異なります。株式会社R65では2023年に「全国の65歳を超えて賃貸住宅のお部屋探し経験がある方」を対象にした調査を実施しています。その結果、65歳以上の高齢者の約27%が「年齢を理由に賃貸入居を断られた経験を持つ」とのことでした。関東圏ではさらに割合が上がって約32%の方が年齢で断られた経験を持つとの結果になりました。60代で賃貸の部屋探しを経験された方に絞ったデータはありませんが、平均と近しい数字になることでしょう。参照元:「高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果」問17参照元:高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2023年)|株式会社R65賃貸入居後に起こりうる現実ここまで、60代で賃貸物件探しをした場合のデータや市場の実情について紹介しましたが、賃貸物件で生活を始めてからも安心できるわけではありません。特に首都圏などでは賃貸需要が高いため、契約後も様々な不確実性やリスクと向き合う必要があります。退去依頼や再転居リスクの現実まず知っておきたいのが、大家からの退去依頼が将来発生する可能性です。例えば、賃貸物件が老朽化して建て替えが必要になったときや、貸主がやむを得ず物件を売却する場合、長期間住んでいても契約を更新できず立ち退きを求められるケースが考えられます。特に普通借家契約の場合、貸主・借主双方に一定の権利が認められていますが、「立ち退き」そのものを完全に避けられるものではありません。また、退去時には家賃の5~6ヵ月分の立ち退き料や引越し費用が支払われる場合もあるものの、次に暮らす物件の初期費用や引越しの手間、住み慣れた地域を離れる精神的負担など、年齢とともに感じる「暮らし替えストレス」は若い頃と比べて大きくなります。年齢を重ねた後の部屋探しの厳しさ退去のタイミングが70代や80代になってからやってきた場合、さらに賃貸住宅を探す難易度が上がるのが現実です。年齢を重ねれば健康面や体力面の問題も増える一方で、物件数自体も限られてきます。人気の少ない立地や築年数の古い物件、エレベーターなしの階段物件しか空きが見つからない、ということも珍しくありません。加えて、大家側の懸念(体調急変時の対応や家賃支払い面の不安など)が強まり、年齢を理由に再び入居を断られてしまう可能性も高まります。シニア向け賃貸という選択肢長期の安心と住み替えリスクの軽減を考えるなら、60代のうちに「シニア向け賃貸住宅」を選択肢に入れておくこともおすすめです。昨今はシニアライフに適した賃貸住宅も増えてきており、高齢者に配慮された室内設計や緊急時の駆け付け・見守りサービス、生活相談員によるサポートつきの物件も登場しています。これらのシニア向け物件では、高齢者の暮らしや将来の体調変化も見据えられているため、一般的な賃貸よりも長く安心して住み続けることができるでしょう。一般の賃貸住宅より入居審査時の年齢によるハードルが下がる物件もあり、預貯金や年金などしっかりとした資産状況があれば契約できる場合が多いです。また、身元保証人がいない場合でも、保証会社や生活サポートの仕組みを導入している物件を選ぶことで借主・貸主双方の安心感が高まります。長い目で考える物件選びの重要性60代で賃貸を選ぶ方にとって、目先の快適さだけでなく、今後のライフステージや健康状態の変化、住み替えリスクまでをしっかり見据えた物件選びが大切です。管理やサポート体制が整っているシニア向け賃貸に早めに住み替えれば、今は元気な方でももしもの時に備える安心感や、将来の住み替えストレスを防ぐことにつながります。子どもに頼らず自ら住まいを選びたい方、今後を見据えてなるべく長く安心して暮らしたい方は、リコーリースのシニア向け賃貸住宅「アンジュプレイス」もぜひ検討してみてください。